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7月号 「アトピー性皮膚炎バイオ製剤治療」

 


アトピー性皮膚炎は、皮膚バリアーが弱く、痒い湿疹を繰り返す病気です。ステロイド外用薬を用いて、湿疹を抑え、バリアー機能を改善すべく保湿剤などによるスキンケアが行われてきました。しかしながら、ステロイド外用剤を長期使用することによりさまざまな副作用が広く知られるようになり、ステロイドを用いない治療を希望される患者さんが増えました。ステロイド外用薬は、痒い湿疹を抑えるのに、最も有効な治療であったため、これを中止することにより病状が悪化・重症化し、全身に湿疹が拡大し、痒みで眠れない患者さんが、連日来院される時代がありました。
アトピー性皮膚炎は慢性疾患であり、良好なコントロールのためには、病状の軽い寛解期のスキンケアや生活改善を行うことで、病気の悪化を抑えることが理想ですが、重症化した病状を改善するには、ステロイドを用いた治療が唯一の手段であったため、連日、ステロイド外用の使用を説得していたことを覚えています。
今から、7年前、注射を用いたバイオ製剤治療が登場しました。治療効果は目覚ましく、痒みを抑え、全身の湿疹も良くなっていきます。糖尿病患者さんのように、皮下に自己注射が簡単に行えるデバイスも開発され、通院も3ヶ月に1回の来院で済むようになりました。しかも、副作用が少なく皮膚科の開業医でも行える夢のような治療薬です。
問題は、高額の薬剤費です。通院で月2回注射を行った場合、月に約4万円程度の費用が必要となります。高額療養費制度といって、年収に応じて医療費を補助できる制度があり、これにより、月1万から2万円前後に費用が抑えられる方もいます。また、公務員や大企業勤務の方は付加給付制度を利用できれば、費用はかなり抑えられます。さらに注射新薬が次々と開発され、月2回の注射で開始するのは同じですが、よくなれば早期に月1回に切りかえられるものも登場しています。
「僕は40年以上、アトピーと付き合ってきています。今更、高額な新薬を使わないでも塗り薬で十分やっていけますよ。」と仰っていた患者さんが「このような快適な生活は想像できませんでした。もう2度と以前のような毎日に戻りたくありません」と嬉しそうに話されました。
薬剤の詳細や費用については皮膚科外来で行っていますので、是非相談にいらしてください。



一般社団法人右京医師会 河合 敬一

6月号 「肺の健康について」

 


みなさんはCOPDという病気をご存じでしょうか。正式名称は慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)といいます。昔は肺気腫と言われていた病気です。いわゆるタバコ病です。もちろん原因は喫煙ですので先天的な原因がない限り喫煙しなければCOPDにはなりません。
COPDになると階段や坂を少し上るだけで息切れをおこすようになり、病状が進んでくると平坦な道でもすぐに息切れが出るようになります。風邪などのウイルス感染で急に息切れが強くなり入院加療が必要なこともあります。急性増悪といいます。このような状況になると命を落とすことも稀ではありません。
COPDで怖いのは肺だけの問題ではなく全身に影響を及ぼすことです。肺機能が低下することで動くのがしんどくなり活動をしなくなります。そうなると筋力の衰えや栄養失調につながり寝たきりに近づいていきます。このような状況をフレイルといいます。
このようにCOPDは肺の問題だけでなく全身に影響が及ぶ病気なのです。早期に発見し治療を開始することで肺機能の低下を遅らせることができフレイルの予防につながります。喫煙歴がある方で心配な場合は医療機関を受診するようにしてください。



一般社団法人右京医師会 田渕 弘明

5月号 「京都府の長寿の秘訣と伝統食を活かした‘腸活’」

 


京都府は全国的に平均寿命が高く、その背景には食文化の影響が大きいと考えられます。
特に、京野菜や漬物を活用した腸活は、健康維持に役立つ要素の一つです。


腸活とは?
腸活とは、腸内環境を整えることで健康を促進する生活習慣のことです。腸には100兆個もの腸内細菌が存在し、これらは善玉菌・悪玉菌・日和見菌に分類されます。
腸活のポイントは、善玉菌を増やし、腸内フローラ(腸内細菌のバランス)を良好に保つことです。これにより、消化吸収の促進、免疫力向上、肌トラブルの改善、メンタルの安定など、全身の健康につながります。


京都の伝統野菜と腸活の関係
京野菜は、食物繊維や抗酸化物質を豊富に含み、腸内環境を整えるのに適しています。
例えば、九条ねぎには抗菌作用があり、腸内の悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。聖護院かぶや賀茂なすには水溶性食物繊維が多く含まれ、腸内の老廃物をスムーズに排出し、便秘の予防にも役立ちます。


京都のお漬物と発酵食品の力
京都の伝統的なお漬物(すぐき漬け、千枚漬け、柴漬けなど)には、乳酸菌が豊富に含まれています。特に、すぐき漬けに含まれるラブレ菌は、腸まで生きて届く強い乳酸菌として注目されており、腸内フローラを整え、免疫力向上や便秘解消に貢献します。発酵食品である味噌や納豆、ぬか漬けと組み合わせることで、より効果的に腸内環境を改善できます。


京都の生活習慣と健康長寿
京都の伝統的な食文化は、健康長寿を支える重要な要素の一つです。
腸活を意識し、京野菜や発酵食品を積極的に摂ることで、腸内環境を整え、健康維持につなげましょう。
適度な運動とストレス管理も取り入れながら、京都の知恵を活かしたライフスタイルを実践することが、健康長寿への鍵となるでしょう。


 

一般社団法人右京医師会 金澤 一典

4月号 「便秘について」

 


便秘は救急外来を受診する患者さんに意外と多い症状です。
便秘とは、便が出ないことだけではなく、出ていても硬い便だったり兎の糞のようなコロコロの便だったり、また便を出せないことによるいきみすぎや肛門に便が詰まった感じ、さらに便を出しにくいことによる不快感なども含めた状態のことをいいます。
便秘は高齢になるほど増え、糖尿病や脳卒中などの病気が原因だったり、不眠症やその他の病気の治療のために飲んでいる薬の副作用だったり、大腸癌が隠れていることもあります。たかが便秘と思われがちですが、便を出すためにいきみすぎて、血圧が上がったり、失神したりすることもあります。また便が詰まって腸閉塞になったり、腸閉塞が原因で腸が破れて腹膜炎になったりすることもあります。
便秘の治療は原因によりいろいろですが、大腸癌などの腸の病気がない場合にはまずは食物繊維を多く摂るなどの食事療法やウォーキングなどの運動療法がすすめられます。それから、便を我慢しないことも大事です。便を我慢することが習慣になると直腸に便がたまった状態に慣れてしまい、便をしたい感じがわかりにくくなります。直腸に長く便が溜まった状態が続くと、便の水分が吸収されて硬い便になり、さらに便を出しにくくなります。食事をすると胃~腸へと刺激が伝わり胃腸の動きが活発になります。便をしたい感じがなくても、朝食後にトイレに座って便を出す習慣をつけましょう。
便秘は我慢せずに、かかりつけ医に相談しましょう。



一般社団法人右京医師会 柳田 敦子

3月号 「スマホ斜視とその予防について」

 


スマホ斜視とは、スマートフォンの長時間使用によって引き起こされる目の異常な位置や動きのことです。具体的には、一方の目が内側にずれてしまう現象で、特に若年層に増加しています。これは、スマホ画面を見るために目を寄せる動作を長時間続けることで起こります。

 

予防法ですが、
1.まずは視線を休ませる
20-20-20ルールを守りましょう。20分ごとに20秒間、20フィート(約6メートル)先を見るようにします。これにより目の筋肉がリラックスし、斜視のリスクを減らすことができます。
2. 適切な姿勢
スマホを持ち上げて目線の高さに合わせることで、首や目の負担を軽減します。常に下を向いて見る習慣は避けましょう。
3. 定期的な眼科検診
もし視力に変化を感じたら、早めに眼科を受診することが大切です。早期発見で予防や治療が可能です。

 

次にスマホとの付き合い方です。
1.時間管理
スマホを使用する時間を制限し、他の趣味や活動に時間を割くようにしましょう。特に夜間はスマホの使用を控え、質の良い睡眠を得ることが重要です。
2.アプリの活用
スマホ使用時間を管理するアプリを使って、自分自身の使用時間を把握し、適度に休憩を取るようにしましょう。 スマホは便利なツールですが、適切な使い方を心がけることで健康を守ることができます。

 

最後にスマホ斜視の治療法です。
スマホ斜視の治療は、症状の程度や個々の状態によって異なりますが、一般的には以下の方法が用いられます
1. 視力トレーニング
眼科での視能訓練:斜視を矯正するための眼筋トレーニングや、両眼視機能を改善するための特殊な眼鏡やプリズムレンズを使用することがあります。
2. 眼鏡やコンタクトレンズ
視力矯正だけでなく、斜視を軽減するための特殊なレンズが処方されることがあります。これにより、目の負担を軽減し、自然な眼位に戻す手助けをします。
3. 手術
重度の斜視や他の方法で改善が見られない場合、手術が必要になることがあります。手術では、眼筋の位置や長さを調整して両眼の調和を回復します。手術は一般的に安全ですが、リスクや回復期間について事前に眼科医と話し合うことが重要です。
4. 生活習慣の改善
デジタルデバイスの使用時間を減らす:治療の一環として、スマホやパソコンなどの使用時間を厳格に管理し、目の休息を確保します。
環境の調整:明るさや画面の位置を適切に調整することも大切です。
5.定期的なフォローアップ
治療が進むにつれて、定期的な眼科検診が必須です。改善状況を監視し、必要に応じて治療計画を調整します。
6.注意点
自己診断や自己治療は避け、必ず専門の眼科医に相談することが重要です。視力や眼の健康は一度失うと取り戻すのが難しいため、早期の専門的な介入が推奨されます。


 


一般社団法人右京医師会 今村 貞洋

2月号 「めまいの原因について」

 


私たちの体は耳、目、筋肉からの情報が脳に送られて統合されています。そして、脳で統合された情報が体の筋肉に伝わることにより、体のバランスが保たれています。
バランスをとる機能に障害が生じるとめまいが起こります。目の前の景色あるいは自分自身がグルグル回る様に感じたり、フワフワあるいはフーっとなると表現されます。この感覚を一般にめまいとよばれ吐き気を伴うこともしばしばあります。原因は大きく分けて

 

① 小脳や脳幹の障害によるもの
② 耳の前庭、半規管と呼ばれる部位に障害が生じた内耳性
③ 内科、循環器科領域及びその他のめまい

 

①の中枢性の場合は目を開けていても体がひどくよろけたり呂律のまわりにくさ、手足の麻痺などの他の神経症状を伴う事があります。
②の代表がメニエール病で耳鳴り、耳閉塞感、聴力低下を伴う回転性めまいを繰り返すものです。めまい=メニエール病とも考えられがちですが、めまい症のうちでメニエール病と診断される頻度はそう多いものではありません。他には良性発作性頭位眩暈(りょうせいほっさせいずいめまい)、前庭神経炎、外リンパ瘻(ろう)などがあります。
③の代表が起立性低血圧、高血圧、不整脈による立ちくらみなどの症状によるめまいです。また頸椎の病気や不安、ストレスにより起こることもあります。また急激な乱視、近視の進行が原因になることもあります。

めまいの原因を突き止めるには症状により内科(神経内科、脳神経外科、循環器内科)、耳鼻咽喉科、眼科の診断が必要になることがあります。

 


一般社団法人右京医師会 進藤 昌彦

1月号 「C型肝炎はむかしの病気?」

 


肝臓は沈黙の臓器と言われています。病気があっても自覚症状がありません。かつて昭和から平成にかけて、多くのC型肝炎の患者さんがおられました。多くは若いころに受けた輸血や予防注射が原因でした。気がつかないうちに肝硬変や肝臓癌になり、多くの方が命を落とされました。当初インターフェロンという注射薬が使われましたが、効果が十分ではなく、副作用も大変なものでした。 しかし、2014年に大きな転機がありました。注射ではなく、飲み薬で治療できるようになりました。
しかも、副作用もなく、数か月の治療で、ほぼ全員が完全になおります。効果は絶大であり、今やC型肝炎の患者さんを外来で見かけることはほとんどなくなりました。
ただし、最初に述べたように肝臓は沈黙の臓器です。C型肝炎をもっていても、自分ではわかりません。日本には、まだ何十万人も未治療の患者さんがいると言われています。もし、今まで一度も検査を受けたことがなければ、ぜひ検査を受けてもらいたいと思います。たとえ感染していても、今は簡単になおります。放置すると大変です。ぜひ検査を受けるようにお勧めします。

 


一般社団法人右京医師会 鍋島 紀滋