ホーム今月の健康アドバイス  >  バックナンバー 2023年

 

2024年度2023年度

2022年度2021年度2020年度2019年度2018年度2017年度2016年度

2015年度2014年度2013年度2012年度2011年度2010年度2009年度

12月号 「「睡眠負債」にご注意を!」

 


皆様、「睡眠負債」という言葉をご存知でしょうか?
「睡眠負債」は、スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の初代所長ウィリアム・C・デメント教授が提唱した概念ですが、日々の睡眠不足(=負債)が蓄積されることで心身にさまざまな悪影響を及ぼす恐れのある状態のことを言います。適切な睡眠時間には個人差があり、日中の活動量や年齢等によっても変わるため一概には言えませんが、一般的に成人では6.5時間~7時間程度とされています。例えば、適切な睡眠時間が7時間の人が5時間しか眠れていない状態が続いた場合、10日間で20時間、30日間では60時間もの「睡眠負債」を抱えることになってしまうのです。
それなら休日に寝だめをすればいいのでは?と思われる方がいらっしゃるかも知れません。しかし、いわゆる「寝だめ」は基本的にその後の健康状態を考えるとメリットよりデメリットのほうが多いと言われています。具体的には、休日に平日より2時間以上長く寝てしまうことで睡眠のリズムが後ろ(先)にずれ、まるで海外旅行をした時の時差ぼけのような状態を引き起こしてしまうのです。このような状態を「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)」と呼びますが、「寝だめ」はかえって疲労がたまったり、体内時計のリズムを乱してしまう原因にもなります。
ではどのようにして「睡眠負債」を返済すれば良いのでしょうか?
・起床時間・就寝時間は変えず、日中に15~20分程度の昼寝をする。
・就寝時間を30分早める。
というように、「睡眠負債」に関しては一括返済ではなく、コツコツと分割返済をしていくことがオススメなのです。
また、時間だけにとらわれず、
・寝る直前にはPCやスマートフォンの画面を長時間見ない。
・食事は就寝の3時間前までに済ませる。
・ペットなどに影響がない場合はアロマオイルを使ってリラックス出来る環境を整える(ペットの種類により、禁忌とされている香りや成分がありますのでくれぐれもご注意ください)。
など、より質の高い睡眠につながる環境を整えることも大切です。

皆様も、「睡眠負債」を抱えることなく忙しい12月を元気に過ごし、健やかな新年を迎えましょう。

 


居宅介護支援事業所 右京医師会  井上 絢

 

11月号 「認知症は避けることができないのか」

 


先進国はいずれも人口の高齢化に直面しており、高齢化社会では、骨粗鬆症などの整形外科疾患、白内障、緑内障、聴力低下などの感覚器疾患などの頻度が増大する。脳疾患も高齢化社会で増大する疾患の代表に含まれることは言うまでもない。中でも認知症は社会経済、個人の生活に与える影響も大きく、重大な関心事である。加齢とともに頻度の増える認知症の代表はアルツハイマー病である。アルツハイマー病は、大脳皮質の神経細胞外に蓄積するβアミロイドタンパクが形成する老人斑と神経細胞内に見られる神経原線維変化の二つで病理学的に特徴付けられる。アルツハイマー病に対する治療薬開発は、減少した脳内アセチルコリンを賦活化する中枢性コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬などがあるが、前記の病理学的変化に直接アプローチする治療法の開発はなかなか進まなかった。しかし、最近、脳内に蓄積したβアミロイドタンパクを除去することを目指した治療薬が視野に入ってきた。
アルツハイマー病には遺伝的な負荷と加齢プロセスが重要であると考えられているが、本稿では、海外での修道女研究Nun studyを紹介したい。Nun studyは修道女という生活習慣や食習慣などが比較的均一なコホートを丹念に追跡し、病理学的な所見を対比させることが可能な縦断研究である。このNun Studyでは百寿者で認知症のない女性も含まれているが、こうした百寿者の脳病理ではアルツハイマー病理がごく軽度までにとどまっていた。一方、アルツハイマー病の遺伝的負荷が高く、実際の剖検時の脳病理でも強いアルツハイマー病理(Braakのステージ6)が示された女性でも直前まで認知症はないか、あってもごく程度にとどまる例が散見されることが示されている。実に驚くべきことであるが、こうした発見は、病理変化があっても臨床症状を呈さないように作用する「疾患抵抗力」のようなものの存在を示唆している。遺伝的負荷や加齢現象に抗することはできない。近年、この脳のもつ「疾患抵抗性」をいかすにはどうしたらよいかが注目されている。これには、脳梗塞などの脳血管病変がないことや、頭蓋内血管の動脈硬化変化がないことなどが関係していることが示されており、また、栄養(葉酸など)の不足を生じないこと、頭部外傷を避けることなども関連している。また、Nun studyは運動習慣(特に有酸素運動)が認知症回避に重要であることも示されている。いってみれば、認知症の発現は、生活習慣とも関連しており、生活習慣の改善を通じて、「疾患抵抗性」を高めることができる可能性がある。今後、βアミロイドの蓄積に対する薬物治療介入とともにこうした生活習慣の改善も重要になるであろう。
宇多野病院では物忘れ外来を通じて、認知症の早期発見のみならず、予防指導などにも務めていきたい。

 


一般社団法人 右京医師会 澤田秀幸

 

10月号 「PSA検診を受けましょう!」

 


前立腺とは膀胱の下で尿道を取り囲むように存在するクルミ大の臓器です。男性にのみ存在し、精液の液体成分を作るという働きをしています。この前立腺に見つかる主な病気として前立腺肥大症と前立腺癌の二つがあります。ともにおしっこが出にくい、おしっこが近いなど排尿の異常を契機に発見されることがありますが、前立腺肥大症と早期前立腺癌を症状だけで鑑別することは困難です。早期の前立腺癌では無症状であることが多く、進行した状態で診断される方もまだまだ多いのが現状です。前立腺癌が進行すると骨に転移しやすく、腰の骨に前立腺癌が転移したために腰痛を契機に前立腺癌が発見される方もいらっしゃいます。
早期に前立腺癌を発見するためには、血液検査でPSA(前立腺特異抗原)という前立腺癌の腫瘍マーカーを測定することが重要です。50歳以上の男性を対象に京都市前立腺がん検診としてPSA検査が実施されていますので、かかりつけ医やお近くの医療機関にご相談ください。PSAは4を超えると異常値とされています。PSA高値を指摘された方は泌尿器科専門医を受診してください。当院ではまずMRIという画像検査を行って、前立腺生検を行うかどうかを決定しています。前立腺生検とは会陰部(陰嚢と肛門の間)から針を刺して、前立腺組織を採取し、採取した組織を顕微鏡で観察して癌かどうかを診断する検査です。前立腺生検は肛門から超音波の棒を入れて前立腺を観察しながら組織を採取します。その際、MRI画像をコンピューターに取り込んで癌が疑われた部位を超音波画像に反映させて生検を行うという、MRI/超音波画像融合ガイド下前立腺生検を当院では行っております。小さい癌、組織採取が難しい場所に存在する癌も正確に組織を採取し、正確な診断が可能となりました。針を刺す時の痛みを心配される方もいらっしゃいますが、当院では下半身麻酔で痛みなく、1泊2日の入院の上、検査を受けていただいております。
まずはPSA検診を受けていただき、異常があれば泌尿器科を受診してください。

 


一般社団法人 右京医師会 岩田 健

 

9月号 「心の声、体の声」

 


心と体はつながっています。一体と言っても良いでしょう。ちょっとした心の迷いが体の動きを妨げますし、軽い痛みでも続いていれば気に病むようにもなります。体のためには心を晴らすことが大事です。心のためには体をいたわることが大切です。 皆さんは日頃どのように心と体に配慮していますか。栄養、運動、睡眠、サプリメントなど様々な方法があります。しかし、人によって体質も違いますし、体調やタイミングによって必要なことも異なります。ご自身に適したものを選ぶ際には、ご自身の「心の声」「体の声」にも耳を傾けてみましょう。
私はお酒を飲み過ぎてくだし気味になると腸の負担を軽くします。腸がしんどいと言っているからです。食を減らし、消化の良いものを口にし、失った水分と塩分を補給し、お腹を温め、飲酒を控えます。
失敗して気持ちが沈むときには空を見上げます。縮こまった心が伸びやかに拡げたいと言うからです。朝、昼、夕、夜、晴れ、曇り、雨、それぞれ異なる空の表情。刻々と変化する雲の色や形、太陽の光、月の満ち欠け、星や飛行機の小さな灯り。それらをゆったり眺めます。そして心が落ち着いたら、「よし誠実に謝って、やり直そう」などと決意します。

知識をインターネットや本から得て、主治医や信頼できる人に相談しながらも、ご自身の心や体の声にも素直に耳を傾けて、日頃から心と体を大切になさいますように。

 


一般社団法人 右京医師会 上田 伸治

 

8月号 「介護のためのおしもの脱毛は世の中の常識になりつつあるのか?」

 


産婦人科の診察時には、おしもの毛については診察の対象ではないのでほとんど意識しませんが、たまに自己処理後の炎症などで受診されることがあったり、ふと気が付くと脱毛処理されてあったり、お手入れされる方が増えてきたのかな?という印象があります。
初めてVIOという言葉を聞いた時は何かパソコン関連の用語かと思っていましたが、実はビキニラインと会陰部と肛門周囲の脱毛のことだと知った時にはのけぞりました。しかもそれを、一部の美意識が高い職業の人とかではなく、「自分が介護をうけるときのために」敢行する人がそれなりにいると聞いて、さらにびっくりしました。
実際介護をしているプロ(看護師や介護士)にご意見を伺ってみました。回答をくださった47名の皆様、ありがとうございます。おしもの毛があることで、介護やケアが大変だと感じるかどうかは、たまにある(21名)、気にならない(17名)、よくある(5名)、毎回気になる(2名)だそうです。毛がない方がケアをしやすいというのはそれはそうですが、あったらあったで陰部洗浄などで対応しているので清潔さの度合いとしては大差ない=気にならないということのようです。どうも、「便が毛にからみついてとりづらい」というのが気になるポイントのようなので、保清のしやすさという点でいうと脱毛までいかなくても短くカットされていればだいぶ負担は軽減されると思われます。また高齢になると皮膚がうすくなるので炎症や感染、皮膚の剥離などが起こることがあります。皮膚の観察は毛がない方がしやすいのですが、毛があることで便がべったり皮膚に付着するのを防いでトラブルを抑える効果もあると思われ、皮膚に関しては毛がない方がいいのかあった方がいいのか悩むところです。また高齢になると皆さん自然に毛は薄くなるので、脱毛までは不要という意見もありました。
医療・介護者自身が介護脱毛をするかどうかは、しない(19名)が最多でしたが、する予定(6名)+するかもしれない(12名)+介護目的ではないがするかもしれない(8名)を合わせると、半数ぐらいの方は脱毛を考えたことがあるようです。
身だしなみの常識は時代や社会に応じて変わるので、VIOの脱毛がどのぐらい普通のことになるのかわかりませんが、陰部は皮膚が薄く毛も太いので、剃毛や自己処理は思わぬトラブルになることもあります。脱毛する場合はしかるべき施設で安全に処置をうけることをお勧めします。そして痛みも相当の程度は覚悟がいるようです。

 


一般社団法人 右京医師会 山西 歩

 

7月号 「その痛み帯状疱疹かも」

 


最近ではテレビなどでもよく“痛みを伴った赤いブツブツは帯状疱疹”などと放送されて、帯状疱疹か心配で早期に受診される患者さんも増えています。帯状疱疹にはやっかいな後遺症に治療後も痛みだけが残ってしまう帯状疱疹後神経痛というのがあり症状が進行する前にいかに早く治療するかは重要なことです。帯状疱疹は必ずしも痛みを伴った発疹から発症するわけではなく、発疹がでるよりも前に痛みだけが先行するパターンがあり、頭痛がして翌朝、赤く腫れて虫刺されで受診されるかたや、腰痛がして湿布をしていたら湿布にかぶれが出てきたなど帯状疱疹とは思わずに受診されるかたも多くおられます。専門医でも発疹がなく痛みの症状だけで帯状疱疹の診断をすることは難しいですが、痛みの状況をよく聞くと皮膚の表面のチクチクした痛みや筋肉が締め付けられるような痛みなど今までに経験した頭痛や筋肉痛と様子が違うことで帯状疱疹が疑われることがあります。特に痛みが右か左か片側だけでしか出ていない場合や痛みの範囲が広がってきている場合には神経に沿った炎症で痛みが出てきているので改めて帯状疱疹の発疹がでていないか注意する必要があります。

 


一般社団法人 右京医師会 今井 慎

 

6月号 「高齢者の睡眠」

 


年齢とともに老眼になり、白髪が増えるように、睡眠にも変化が生じます。
まず、若い頃に比べて早寝・早起きになります。これは体内時計の変化によるもので、睡眠だけでなく、血圧・体温・ホルモン分泌など睡眠を支える多くの生体機能リズムが前倒しとなるからです。次に睡眠が浅くなります。脳波では、一番深いノンレム睡眠と呼ばれる睡眠相が減り、浅いノンレム睡眠が増えます。そのため、尿意や少しの物音にも目が覚めてしまいます。
対応法としては、不眠を悩まないことが大切です。とくに高齢者の場合、早朝覚醒それ自体は病気ではありません。眠気が出てから床につきましょう。朝方に目が覚めて二度寝ができないようなら床から出て、朝活動しましょう。また、一定時刻に寝て、一定時刻に起きることを心がけ、「午前中に日光を浴びる」ことが大切です。寝付きが悪くならないようにアルコール・カフェインの摂取を控えましょう。また、水分補給は重要ですが夜間覚醒を減らすために、夕刻以降の過剰な水分摂取も控えることも心がけましょう。

 


一般社団法人 右京医師会 多賀千明

 

5月号 「膵癌高危険群」の豆知識

 


ご存じのように膵癌は難治がんの代名詞です。私は大阪府立成人病センター(現・大阪国際がんセンター)で根治可能な膵癌の診断をしてきましたので、膵癌のハイリスクについてご紹介します。同センターにて1987年に膵液中の癌細胞を顕微鏡で診断(膵液細胞診)し、膵管の表面だけに存在する早期の膵がん(上皮内膵癌)を切除しました。このような治る膵癌は画像で腫瘤を認識するのが困難ですので、1987年以降は、内視鏡を用いて膵管を造影剤で映し出す検査(ERCP)を行うほとんどすべての患者さんに膵液細胞診を行いました。その結果、腹部エコー検査などで膵腫瘤が検出されなくても膵嚢胞が認められた方では、上皮内癌を数%の割合で検出しました。膵嚢胞とは膵臓の中に発生する内部に液体の入った風船のような袋状の病変ですが、嚢胞の存在部位はがんの存在部位と同じではなく、嚢胞は、がんに進展していくという前がん病変ではなく、がんが発生するリスクのある膵臓に伴って認められる背景の病変または随伴する病変です。
その後、日本から報告された病気である比較的予後の良い「粘液産生膵癌」を含む病気として「膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)」の分枝型が、難治がんである普通の膵癌(通常型膵癌)の高危険群であることが判明しました。膵嚢胞の多くが分枝型IPMNと診断されるようになり、膵癌の高危険群として経過観察されていますが、この際も、袋状に拡張した部分のみに気を取られることなく、膵臓全体を観察し、合併する可能性のある通常型膵癌の検出に努めることが重要です。大阪府立がんセンターのデータでは、膵嚢胞を持つ方は年率0.4%程度の割合で膵癌が発症すると推定されます。
やせ型の方では腹部エコー検査で膵臓全体がかなりよく見えますが、肥満の方は腹部エコー検査で見えない膵臓の部分もありますので、造影CTやMRCP検査をお勧めします。造影剤を使わない単純CTでは小さな腫瘤が検出できません。MRCPとはMRIの装置で膵管や胆管を映しだす撮影法です。
この他に、糖尿病や慢性膵炎も膵癌の高危険群ですので、膵臓の経過観察をお勧めします。

 


一般社団法人 右京医師会 中泉明彦

 

4月号 「鼓膜にあいた穴はふさぐことができます」

 


幼い頃の中耳炎や、耳かきでついたりしたことが原因で鼓膜に穴があいてしまうことがあります。自然にふさがることもありますが、長年穴があいたままの状態が続き、きこえが悪くなったり、鼓膜の穴から細菌が入って耳だれを繰り返してしまうこともあります。古傷となってしまった鼓膜の穴をふさぐためには従来は手術が必要で、鼓膜の穴をふさぐための材料を耳の後ろ側を切開して採取していましたが、医学の進歩に伴い、鼓膜を再生させる治療法が実用化されました。鼓膜再生療法と呼ばれる方法で、耳の後ろ側を切開する必要はなく、入院や全身麻酔も不要で、10分から20分程度の簡単な外来処置で治療可能という画期的な方法です。大人だけでなく処置に協力できる小学校高学年くらいなら治療可能です。1回の治療による成功率はどの施設でも7割程度ですが、1回だけしか治療できないというわけではなく、計4回治療が可能ですので、1回目の治療で穴がふさがらなかった場合は再度治療を行うことができます。鼓膜の穴の状態によってはこの治療ができないこともあり、また治療ができる医療機関も限られているため、ご希望の方はまずかかりつけ耳鼻咽喉科医に相談されるのがよいでしょう。

 


一般社団法人 右京医師会 鈴木敏弘

 

3月号 「コロナ2019の予防ってどうするの?」

 


新型コロナ感染症は名前は変わりますが(コロナ2019)、感染力は変りません。
コロナ2019は現在、第8波の出口にきています。今や京都市内には旅行者が溢れるようになり、卒業式や入学式もマスクなしで出来るようになりました。しかしながら、コロナ感染症は、また増えてくると思われます。コロナ感染症のパンデミックが始まって以来、数種類のワクチンと治療薬が前例のない速さで開発され、一定の効果は確認されています。コロナ2019の薬は、もっと効果が期待されるものがでてくるかもしれません。それでも、ワクチン接種の有無は、高齢者(65歳以上)や呼吸器疾患、心疾患をはじめ、免疫機能が低下している方には、生死をわける因子になるかもしれません。こうした薬やワクチンは感染しないためのものではなく、重症化を防ぐためのものです。予防は手洗い、口すすぎと状況に応じてマスクを装着するしかないのです。日本の過去を顧みれば、古事記の時代から人の集まる、神社、寺社では、かならず手洗いと口すすぎがありました。改めて日本の昔の方は、感染症の予防法を知っていたと感心せざるを得ません。我々は、過去に立ち返り、こうした基本的な予防手段を身に付けて、これからもくるであろう未知の感染症に立ち向かわねばならないのです。

 


一般社団法人 右京医師会 安田冬彦

 

2月号 「かぜに漢方薬は効くの?」

 


漢方薬って、慢性疾患の人が長くじっくり飲み続ける薬じゃないの?
確かに急性期の病気は西洋薬で治すのが当たり前で、漢方薬でのんびり対応している場合じゃない、というのが一般的な認識かもしれません。しかし、漢方の歴史を振り返ると、漢方薬は最初から急性期の病気を標的に開発された薬だったことがわかります。およそ二千年前に中国で漢方治療が始まった時代には細菌感染による急性熱性疾患(感染症)で死亡するケースが多く、薬に対して求められる第一の使命は速効性でした。より速効性がありより効果のある薬剤だけが長い歳月をかけて取捨選択されてレシピとして記録されてきたのです。その後病原菌が特定されている細菌性の感染症に対しては、抗菌薬という特効薬が開発されました。しかしウイルス性の感染症に対しては、一部のものを除いて現在でも特効薬が存在しません。また細菌性の感染症についても、抗菌薬は病原菌を殺すだけで、炎症を鎮める力はありません。西洋薬の中にも炎症を抑える薬はありますが、一方で体の免疫力を低下させてしまうという難点があります。これに対して漢方薬のほとんどは炎症を抑える働きを持っています。しかも同時に体の免疫力を高める働きがあります。つまり、西洋薬と一緒に漢方薬を使用すると炎症はすみやかに解消されるのです。炎症を抑えること、そして体の免疫力を高めることこそが漢方薬が急性期疾患に効果を発揮する最大の理由なのです。さらに効果を最大限に得るポイントは炎症の状態を細かく見極めることです。いま炎症の起こっている部位、程度、ステージ、患者さんの反応の強弱などによって効果のある薬が変わっていきます。急性期の症状に対してはいま出ている不具合な状況に対して、素早く適切に投与することが非常に大切になります。
薬というのは西洋薬・漢方薬を問わず、病気そのものを治しているわけではなく、体にもともと備わっている“治す力”を引き出す原動力にすぎません。かぜを治す治療薬はありません。すべての人に備わっている病気を治す力を回復させるのに漢方薬は有効なのです。
御自身の免疫力を上げるために栄養と休息を十分にとり、かぜかな?と思ったら状況に合わせて有効な西洋薬・漢方薬を使い分け、ウイルス感染症が蔓延しているこの時期を乗り切っていきましょう。

 


一般社団法人 右京医師会 和田 篤

 

1月号 「あなたの腎臓、大丈夫?」

 

慢性腎臓病という病気をご存じですか?
最近、慢性腎臓病に関わるテレビやラジオCMがいくつかあります。女優・檀れいさんが「自覚症状のない慢性腎臓病」だから「検査に耳を傾けてください」と伝えているもの、ヤング島耕作がシニア島耕作に「若いうちから、腎臓検診」を受けるように注意されるというもの、1年ほど前ですが、落語家・林家たい平さんが「検査がかん腎」と検査をうけるように訴えているもの。
これらのCMで共通しているのは、慢性腎臓病は自覚症状がなく、検査で発見される病気で、検査を受けることが重要だということです。たしかに多くの場合、慢性腎臓病は尿検査や血液検査で発見されます。尿検査で蛋白尿があるかどうか、血液検査ではクレアチニン・eGFR(イージーエフアール)値が重要です。8人に1人は認められるという慢性腎臓病。進行すると透析などが必要になったり、心臓病や脳卒中を合併したりします。早期に分かれば、ほとんどの場合さまざまな治療法により進行の抑制が可能です。
是非、少なくとも年に1度は血液検査・尿検査を受けて、ご自身の腎臓が大丈夫かチェックするようにして下さい。


一般社団法人 右京医師会 木下千春