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12月号 「「睡眠負債」にご注意を!」
皆様、「睡眠負債」という言葉をご存知でしょうか?
「睡眠負債」は、スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の初代所長ウィリアム・C・デメント教授が提唱した概念ですが、日々の睡眠不足(=負債)が蓄積されることで心身にさまざまな悪影響を及ぼす恐れのある状態のことを言います。適切な睡眠時間には個人差があり、日中の活動量や年齢等によっても変わるため一概には言えませんが、一般的に成人では6.5時間~7時間程度とされています。例えば、適切な睡眠時間が7時間の人が5時間しか眠れていない状態が続いた場合、10日間で20時間、30日間では60時間もの「睡眠負債」を抱えることになってしまうのです。
それなら休日に寝だめをすればいいのでは?と思われる方がいらっしゃるかも知れません。しかし、いわゆる「寝だめ」は基本的にその後の健康状態を考えるとメリットよりデメリットのほうが多いと言われています。具体的には、休日に平日より2時間以上長く寝てしまうことで睡眠のリズムが後ろ(先)にずれ、まるで海外旅行をした時の時差ぼけのような状態を引き起こしてしまうのです。このような状態を「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)」と呼びますが、「寝だめ」はかえって疲労がたまったり、体内時計のリズムを乱してしまう原因にもなります。
ではどのようにして「睡眠負債」を返済すれば良いのでしょうか?
・起床時間・就寝時間は変えず、日中に15~20分程度の昼寝をする。
・就寝時間を30分早める。
というように、「睡眠負債」に関しては一括返済ではなく、コツコツと分割返済をしていくことがオススメなのです。
また、時間だけにとらわれず、
・寝る直前にはPCやスマートフォンの画面を長時間見ない。
・食事は就寝の3時間前までに済ませる。
・ペットなどに影響がない場合はアロマオイルを使ってリラックス出来る環境を整える(ペットの種類により、禁忌とされている香りや成分がありますのでくれぐれもご注意ください)。
など、より質の高い睡眠につながる環境を整えることも大切です。
皆様も、「睡眠負債」を抱えることなく忙しい12月を元気に過ごし、健やかな新年を迎えましょう。
居宅介護支援事業所 右京医師会 井上 絢