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12月号 「心の健康について」

 

健康の定義(WHO)憲章では「健康」を次のように定義しています。
「健康とは 病気でないとか、弱っていないという事ではなく、肉体的にも精神的にも そして、社会的にもすべてが満たされた状態であることを言います。(日本WHO協会訳)」
このように「健康」には身体の状態のみだけでなく、精神の状態の状態にも大きく関わってきます。
忙しくて食生活が偏ったり、なにか心配事があったり、十分な睡眠がとれない日が続いたりすると、身体の不調を感じることはありませんか?整った生活習慣は、健康な身体作りには欠かせません。健やかな毎日を送る為には、運動・食生活・心の健康・睡眠に気を配ることが大切です。
身体の健康はもちろん大事ですが、それと同じくらい「心の健康」は大事です。 心が健康であることは、自分らしく生きられていることではないでしょうか。
その為には、楽しい感情やワクワクする感情を持ったり、周囲との友好的な人間関係を築けることも大切ではないかと思います。
人それぞれ様々な楽しみがあると思いますが、私の最大の楽しみは登山です。自分の足でしか行けない、未知の世界にワクワクします。途中でしんどくなり、これ以上無理かなとくじけそうになった時、仲間や他の登山者の声掛けに救われます。一歩づつ進み登頂できた瞬間、目の前にパッと広がる素晴らしい景色を目の当たりにすると達成感に満ち溢れます。疲労困憊(こんぱい)であった疲れが気持ち良い疲れと変わり、心もスッキリとし山のエナルギーがひしひしと伝わってきて、生きていることを肌で感じられます。山頂での乾杯のビールは格別で五臓六腑(ごぞうろっぷ)に染み渡る美味しさです。そして、下山後の温泉は何よりも身体の疲れを癒してくれます。
これからも、この楽しみに限らず、自分の状態や状況に応じた楽しみを持ち続けられることが出来る様に、整った生活習慣や定期的な健康診断など、身体と心の健康の維持のために心がけていきたいと思っています。


一般社団法人 右京医師会 看護師 木谷順子

11月号 「気をつけて そのごちそうで 足腫れる ~痛風・尿酸・プリン体~」

 

痛風、ご存知でしょうか。
体の中に尿酸がたまり、それが結晶になって激しい関節炎を生じる病気です。
足の親指の付け根などに起こることが多く、赤く腫れて熱を持ち、歩くのも不自由となります。発作的な症状で、数日でしだいに治まり、発作がないときは全く症状がありませんが、その痛みは激烈で、耐え難いといわれています。
痛風は古くから知られた病気の一つで、「皇帝病」の異名のごとく、ヨーロッパでは貴族に多かったようです。エジプトではミイラの関節中に尿酸塩が発見されたことがあるそうです。 尿酸とは、尿中から発見された有機化合物で、プリン体といわれる物質が体内で分解されてできた老廃物です。プリン体はDNAの原材料のひとつで、細胞の核の中にたくさん含まれています。食品となる動植物も細胞で構成されるので、たくさん細胞が含まれる白子やレバーなどはプリン 体が多いです。
日本では、明治以前には痛風患者はいなかったのが、近代以降とくに1960年代以降は数十万 人と推定されています。他のアジア諸国でも患者が急増しているようで、その理由として食事内容の変化、つまり一般市民がプリン体に富む食事を頻繁に摂取するようになったことがひとつとして考えられます。
プリン体は体内で分解され尿酸となります。そのためプリン体を摂りすぎると、血液中の尿酸値が高値となり、これを「高尿酸血症」といいます。一般的に美食・過食が誘因になると言われています。
高尿酸血症は、痛風だけでなく、高血圧や動脈硬化といった生活習慣病のリスクファクターともなり、特に怖いのは、「痛風腎」と呼ばれる腎臓での尿酸結晶による炎症反応で、腎不全から死に至ることもあります。
そんな「痛くて恐ろしい」尿酸が、なぜ体内に存在するのでしょう。実は、尿酸にはヒトの体内で有 益な働きとなる別の役割もある、といわれています。
ある研究では、霊長類の血清尿酸値と寿命とに正の相関が報告されたそうです。また、酸化ストレスの研究分野では、尿酸はヒトの体内において最強の抗酸化剤であり、老化や病気に関連する体に有害な活性酸素を消去する、という説が有力とのことです。
どうやら我々の血液中の尿酸値は高くても低すぎてもいけないようです。
となると、これはプリン体がゼロだから体に良い食べ物だ、とかあれは悪い食べ物だ、とかは一概には言い切れないようですね。極端な偏食や美食、過食は避けながら、色々美味しいものが多いこれからの季節を楽しみましょう。


食べ物の 良いも悪いも 食べ手次第 ~字余り~


一般社団法人 右京医師会 小串 むつみ

10月号 「スマホ○○」

 

 スマホの功罪については様々言われています。眼科領域でもスマホによる近視の発症・進行はよく知られていますが、それ以外の罪にあたる2つを紹介しましょう。
一つはスマホ斜視とも言われる後天性の内斜視(眼球が内側に寄る)で、視界が二重に見える不具合が起こります。スマホなどを見過ぎることが原因の一つと考えられ、10代に急増しています。近くを見るときには焦点を近くに合わせる調節と、視線を内側に寄せる輻輳とが起こります。スマホは20cmくらいのごく近距離を見ますので、読書やパソコンよりも強い調節と輻輳が起こります。この負荷を長期間続けていると、近くを見ていないときにも輻輳だけが働き元に戻らない状態、つまり眼球が内側に向いたままの内斜視になると推測されています。スマホなど近くを見る時間を減らすと改善することがありますが、難治の場合は手術が必要になることもあります。
もう一つはスマホ失明と呼ばれていますが怖いものではありません。暗い所で横向きに寝ながらスマホを見ていて、下の目が枕などで塞がれ上の目だけで見ている場合に起こります。網膜には2種類の光を感じる細胞があります。明るい所で働く錐体と、暗い所で働く桿体です。桿体は明るい所ではすぐに疲れて働けなくなり、回復するのに数分かかります。上の目はスマホの明るい光を受けて錐体は働いていますが、桿体は疲れて働けない状態になっています。この状態がしばらく続いたあとスマホをやめて暗い部屋を見ると、下の目は桿体がすぐに機能して良く見えますが、上の目は桿体が働けないのでほとんど何も見えない状態になります。数分で上の目の桿体も回復しますので見えるようになりますが、一時的に片目が失明したと慌てるのです。何とも人騒がせなスマホですね。


一般社団法人 右京医師会 松本康宏

 

9月号 「ちょっと待って!その点鼻液」

 

 表題にある点鼻液は市販の点鼻液のことです。つらい鼻つまり、鼻がつまって寝られない経験をするとまた夜になって寝られない恐怖が・・。ついつい手を出してしまうのが市販の点鼻液、そうドラックストアーにたくさん置いてあるあれです。市販の点鼻液の多くには血管収縮液が含まれています。成分表にナファゾリン・トラマゾリン・テトラヒドロゾリンとか書いてあります。鼻の粘膜にある受容体に作用して強力に鼻の血管をしめてくれるので鼻つまりから解放されます。でも効果は数時間で一過性の効果です。また鼻がつまり再び点鼻します。これを繰り返し長期になると受容体の調整機能が障害を受け作用しなくなります。これが薬剤性の鼻炎、すなわちさしても効かないどころか鼻閉が強まるという厄介なことになります。

 

 何回も点鼻液を使うということは、それなりの鼻の病気があることを理解しなくてはなりません。まずは鼻の入り口からのどまでしっかり観察してもらいましょう。鼻の軟骨が曲がっていたり、ポリープがあったり蓄膿であったりします。最も多いアレルギー性鼻炎の鼻つまりの場合はステロイド点鼻への変更や、他の抗アレルギー剤に変えることで多くの場合は市販点鼻液から離脱できます。


一般社団法人 右京医師会 斉藤憲治

 

8月号 「夏の皮膚トラブル」

 

夏の皮膚トラブルといえば、日焼け、虫さされ、かぶれ等です。
日焼け
小麦色の肌がいいとか、日焼けは健康的とか言われていたのは、一昔前の話です。昨今は日焼けはシミ、シワのもとですし、若いときに浴びた紫外線の量と高齢になってからのシミ (老人性色素斑、脂漏性角化症)の数は比例すると言われています。海水浴やプールに行く時だけでなく、日常的にサンスクリーンを使用することは、そういった光老化を防ぐためにも重要と考えます。SPF50,PA++++でウォータープルーフ耐水性のものを選びましょう。学校のプールで使用禁止となっている場合、オーガニックで海に流しても安全な商品も出てきています。

虫さされ
最も多いのは蚊による虫さされと思います。数年前にデング熱媒介が問題となり話題となったと思います。さらにマダニ媒介のSFTSという希なウィルス感染症も毎年報告されています。これらの虫さされ予防にイカリジンという虫除け剤を塗布しましょう。特にハッカ油が含まれるものはマダニにも有効です。顔首腕と露出するところにまんべんなく塗りましょう。スプレータイプでも、手に取り塗り広げることが重要です。万が一刺された場合は、クリニックでもらった外用剤を塗布しておけば悪化を防ぎます。掻きすぎるととびひ(伝染性膿痂疹)になっていきますので、注意を要します。しこりやダニが残っている場合は、早期に皮膚科受診をおすすめいたします。

かぶれ

気温の上昇とともに肌を露出する機会が増え、かぶれの患者さんも増えてきます。趣味の園芸で植物にかぶれたり、市販のサンスクリーン、虫さされ用塗り薬でかぶれたりする場合もあります。気をつけなければならない点は、その物質がついた日には何もでずに、2日から3日たってから皮疹(ぶつぶつ、あかみ)がでてくるとうことです。2日前につけたものなど、人は忘れてしまいがちです。しかも普段使っているものでも、突然あわなくなりかぶれることがあります。身の回りには、非常に多くの物質が存在し、どれもがかぶれの原因になりえます。症状が強い場合は、検査であるパッチテストをして、原因を特定した方がいいケースもあります。


一般社団法人 右京医師会 松木正人

 

7月号 「リフィル処方について」

 

 本年4月に診療報酬(公的医療保険制度における医療行為に対して支払われる費用)の改定が行われました。この改定は2年に一度行われていますが、本年度の新規項目の一つとして、リフィル処方箋(一定の期間内に1つの処方箋を繰り返し使えるもの)が導入されました。これは患者さんの通院負担を減らすことができる一方、医療機関が介在することなく処方されるという面から、健康状態の把握が困難になることが非常に危惧されています。つまり患者さんの病状に応じて加減が必要な薬剤や、副作用の発現率が比較的高い薬剤などを処方する場合に、リフィル処方箋を受け付けた薬局・薬剤師の方が適切な対応を取れるかどうか、といった問題が出てまいります。

 

 4月に財務省が出した見解では、リフィル処方を積極的に推進する保険者にはインセンティブを与えるということです。かつて特定健診・保健指導や予防・健康づくりなどへの取り組み状況に応じて、保険者にインセンティブを与えるということはありましたが、これと同列に扱うことは非常に危険です。仮に積極的にリフィル処方を推奨された患者さんに、何かしら事故が起こった場合の責任の所在はどうなるのでしょうか?

 

 元々、診療報酬改定に盛り込む医療政策は、厚労相(大臣)の諮問機関である中央社会保険医療協議会で、支払い側・診療側・公益の代表者が、厚労省の社会保障審議会という部門で企画・立案された基本方針の項目を詳細に検討し、厚労相に答申を出して決定されてきた経緯があります。今回の改定ではこの過程を踏まえることなく、財務相と厚労相たった二人の大臣折衝のみでリフィル処方箋が導入されました。経済性に主眼を置いた医療政策の決定は非常に危険なことですが、財務省は「診療報酬体系や個別の改革項目に財務省や財政制度等審議会が提言するのは『当然の責務』」とまで言っています。

 

 また、先に導入されたオンライン診療は、離島やへき地など医療資源の少ない地域においては有用であり、現下のコロナ禍においては感染リスクを減少させるメリットがあります。他方で、診療の際に医療提供側は視覚と聴覚のみに頼らざるを得ない側面もあり、医療安全の観点からは十分とはいえないことも事実です。コロナ禍という特殊な事情から、初診からのオンライン診療が時限措置として認められましたが、この制度を強力に推進している政府の規制改革推進会議などは、この時限措置を恒久化しようとしています。さらに別の問題として、一部の医療機関による『糖尿病治療薬をやせ薬と称して販売する自由診療』などというとんでもない事例も起こっています。

 

 最近の情勢を見ておりますと、新たな制度を策定する場合には、起こり得る問題を十分に検討した上でなされるべき、という当たり前の過程がないがしろにされていると言わざるを得ません。利便性を追求するがあまり、医療の質と安全が根底から崩れるようなことがあれば、全くもって本末転倒です。今回のリフィル処方箋の導入は、真に国民の健康が考慮されたものと言えるでしょうか。改定の直前に厚労省はパブリックコメントをわずか数日募集し、医療提供側からは懸念される点も指摘されましたが、何ら傾聴されることはありませんでした。区民・市民の皆様はどの様にお考えになりますでしょうか。

一般社団法人 右京医師会 米林功二

 

6月号 「お天気と頭痛」

 

 私は、交通事故や手術、脳血管障害などで脳が傷ついた方の診療を主に行っています。そういう方に多く見られるのが、お天気の変化に伴って生じる頭痛です。晴から雨への変化もそうですが、雨から晴の変化も、患者さんによっては頭痛を引き起こすようです。患者さんによっては、天気予報より先に雨が降ることがわかる、あるいは台風が発生したな、みたいなことがわかる、という方もいらっしゃいます。
このようなことがなぜ起こるのか、というのは、いまだ完全に解明されたわけではないのですが、いくつかヒントとなる事実があります。1つは、鳥に備わっているお天気(正確には気圧変化)測定装置です。鳥には内耳に傍鼓膜器官という特殊な器官があることが知られています。この期間には、我々にある三半規管などと同様に有毛細胞があり、鼓膜にかかる気圧のわずかな変化を感知できるようになっています。こうして天気の変化を知り、雨が降るときには活動しないようにしているようです。
哺乳類にこのような能力があるかについては、中部大学の佐藤らが、ネズミを使った実験をしています。佐藤らは、気圧を変えることが可能な部屋にネズミを入れて、気圧変化をさせた後で脳を調べ、延髄にある上前庭神経核で神経伝達が行われた痕跡を発見しました。哺乳類では三半規管あるいはその一部である球状嚢と呼ばれる部分が、気圧を感知して延髄に伝達しているのではないか、というわけです。佐藤らは、このことが気圧の関係する頭痛などに関連しているのではないかと推測しています。
メカニズムがはっきりわかり、対処ができるようになれば良いのですが。



一般社団法人 右京医師会 上田敬太

 

5月号 「保健機能食品(健康食品)」

 

 「トクホ」が1991年に栄養改善法で法制化されて、現在「トクホ」だけで1061品あると言われています。そのほかに保健機能食品として、2001年から「栄養機能食品」、2015年から「機能性表示食品」の表示が始まりました。保健機能食品以外にも法令上の定義がない、いわゆる「健康食品」もあります。現在、スーパー、コンビニエンスストアなど、買い物に行った時「健康食品」を見かけない日はないと思います。

 

 「トクホ」を目にするのが当たり前になってきてから、「よく○○を飲んだら薬を飲まなくてもよいですか?」「○○をとっているから、大丈夫かと思っていましたが」「○○と●●、飲むならどちらが良いですか」といった質問を受けることが多くなっています。
上記の質問に答える前に、そもそも「トクホ」「栄養機能食品」「機能性表示食品」がどういったものかというのを説明します。

 

・「トクホ」とは消費者庁(国)が安全性、有効性を確認したうえで、認められた成分が、論文に掲載される事を条件に「脂肪や糖、血圧を正常に保つことを助ける」や「おなかの調子を整える」などの保険機能の表記が認められているもの。

 

・「栄養機能食品」とは、具体的にはビタミンやミネラル、n-3系脂肪酸が認められており、一日摂取量の上限、下限が記載されており、注意事項が表示されていれば、許可や届け出なく、栄養成分の栄養機能を表示できるもののことである。

 

・「機能性表示食品」とは、「トクホ」と同じく、保健機能を表示できるが、消費者庁(国)は調査を行わず、事業者の責任のもとで、保健機能の表示を行い、消費者庁に届け出を行っているもの。

 

 上記を踏まえたうえで、質問の答えですが、いずれも食品の中に関与成分が入っているため、全く効果がなしというつもりはありません。ただ、消費者庁のHPでも記載はされておりますが、疾病の治療や予防に効果があるというものではなく、あくまでも、食品としての保健機能があるかもしれないとのことです。もちろん疾病の治療を投薬でしないといけない人が健康食品を摂取するだけで投薬の代わりにはなりません。服薬しないといけない人は服薬治療を受ける必要があります。生活習慣を正さないまま、健康食品をとり続けても、疾病の予防、治療にはならず、健康食品の効果は発揮できないとおもいます。

 

 疾患に対する、予防、治療はまずはバランスのよい食事と運動が一番です。そのバランスのよい食事の中に保健機能食品を入れていくのは問題ないと考えます。ただ、保健機能食品をとっているから大丈夫という、考えは非常に危険であり、あくまでもバランスのよい食事をとったうえで「摂取することで効果があればよいな」ぐらいの気持ちで摂取する形が良いのではないでしょうか。

一般社団法人 右京医師会 林 真也

 

4月号 「認知症のこと、どこで相談したらいい?」

 

 最近もの忘れが多い、以前はできていたことができなくなった。認知症のことが気になるがどこに相談したらよいかわからない。このような時はまず、かかりつけ医にご相談ください。身近の多くの医院、診療所で認知症の評価や診断をし、内服治療などを受けることができます。認知症を診る専門の科は脳神経内科や精神科、老年科などですが、必要な時にはかかりつけ医と専門医が連携をします。京都市のホームページには認知症の相談を積極的に受け入れている医療機関の名簿が公開されています。

 

 認知症サポート医とは認知症サポート医養成研修を修了した医師であり、かかりつけ医への助言等の支援をしたり、専門医療機関や地域包括支援センター等との橋渡し役を担っています。右京区でも7名のサポート医が活動しています。

 

 認知症に関する相談は高齢サポート(地域包括支援センター)や区役所の保健福祉センターでも受け付けています。看護師、精神保健福祉士、社会福祉士など医療保健福祉の専門職と認知症サポート医により認知症の早期発見と早期対応を目指して活動する「認知症初期集中支援チーム」も右京区で活動しています。認知症についての心配ごとやお困りごとがあったらご相談ください。くわしくは京都市のホームページをご覧ください。

 

■京都市 認知症相談支援の窓口

https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000181903.html

一般社団法人 右京医師会 松井 亮好

 

3月号 「認知症と予防」

 

 新型コロナウイルス感染症が流行する中、認知症の人を含め高齢者はとりわけ大きな影響を受けてきました。自粛などの感染予防策に伴い不活発な生活を送る方も増えており、気持ちの面だけでなく、認知機能や身体機能においても大きな影響を受けています。今後さらに長期化するという懸念も指摘される中、薬物以外で少しでも認知症予防に取り組めることがあります。

 

 アルツハイマー型認知症の発症原因となる物質は、発症のおよそ20年前から蓄積し始めるとされています。ですから70歳で発症した場合は、50歳から発症原因の物質がたまり始める計算になります。認知症は持病や生活習慣によっても発症リスクが高まることから、40代後半で認知症予防をはじめても決して早すぎることはありません。

 

 認知症の予防には外出や人と話す機会を増やすことも重要ですが、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病、喫煙、過度の飲酒も認知症のリスクと言われており、これらの生活習慣病の治療や生活習慣の是正が認知症の予防に重要となります。


食生活面では摂取カロリーを守る、塩分制限のほかに地中海沿岸の国の伝統的な料理「地中海食」が良いとされています。地中海食の特徴としては「肉より魚を多く摂る」「果物や野菜、豆類を多く摂る」、「オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う」などがあります。しかし、食文化が大きく異なるわが国では、地中海食を日本人とりわけ高齢者に導入することは難しいですよね。主食(米)に偏らず、主菜や副菜をしっかりとってバランスの良い食事が認知症の発症リスク軽減につながります。また、国立長寿医療研究センターの研究で認知症でない人は、魚介類、きのこ、大豆類、コーヒーを多く摂取していたとも報告されています。

 

 適度の運動も有効で、有酸素運動は少なくとも10分以上続ける必要があります。運動習慣がない人は30分程度の早歩きを週に3回行うことを目標にしましょう。

 

 抗認知症薬での治療やせん妄対策なども重要ですが、上記のような日常生活の取り組みでできる認知症予防は重要かつ有効なものなので、是非実践してみてください。


出来ることから取り組んで、認知症の少ない地域づくりを目指していきましょう!

一般社団法人 右京医師会 濱中 正嗣

 

2月号 「脳卒中~注意信号を見落とさないで~」

 

 “脳卒中”は、がん、心臓病、肺炎とともに死亡原因 の上位を占め、寝たきりになる原因の第一位です。
近年、脳卒中の中でも“脳こうそく”という病気が 増えています。“脳こうそく”の治療は一刻をあらそいます。
発症後すぐであれば,脳の血管に詰まった血のかたまりを溶かす薬(t-PA)を点滴する効果的な治療法によって,救命率を高め,また後遺症も軽くなる可能性が高まります。しかしt-PAは発症後4.5時間以内の場合のみ行える治療法です。治療前の検査に1時間程度かかりますので,症状が出てから遅くても2時間以内を目安に,できる限り速やかに受診することが重要です。
次のうち1つでも当てはまる症状があれば、“脳こうそく”の可能性があります。症状が軽くてもすぐに救急車を呼んでください。
 ニッコリ笑うと口や顔の片方がゆがむ
 手のひらを上に両手を前方にあげ、 5つ数える間に、片方の腕が下がる
 「今日は天気が良い」とうまく言えない

冬は脳卒中が増える季節です。「少し休めば治るだろう」と様子を見て、手遅れになってしまった患者さんをたくさん見てきました。症状があれば、ためらわず、すぐに受診していただくようお願いします。

一般社団法人 右京医師会  森 一樹

 

1月号 「寒い冬場に気をつけてほしいこと」

 

 冬は気温が下がるとともに湿度も夏と比べて低下します。このような冬の特徴ゆえに、発生しやすいのが、感染症の流行と血圧の上昇です。
冬季の気温および湿度の低下に関しては、できるだけ適切な温度、湿度を保つことが重要で、看護師の国家試験問題にも以下のような問題が出題されています。
患者を取り巻く環境について正しいのはどれか。
1.病室の湿度は10~20%に保つ。⇒ ×
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)における相対湿度の管理基準値は40~70%と定められています。
2.冬季の室温は17~22℃に保つ。⇒ ○
気温が低い時に、湿度が低いとウイルスの生存率は上がり、ウイルスが体内へ侵入することを防ぐ気道の線毛輸送機能が低下するため、ウイルス感染が成立しやすくなります。
また気温の低下は、血管の収縮を招き、血圧の上昇をきたすことにつながります。夏季は降圧薬が必要でなくても、冬季には降圧薬を要する人もいますが、外気温による影響が考えられます。冬季は特に入浴後に浴室と脱衣所の温度差から血圧が大きく変動することもあり、これはヒートショックといわれ、失神や心筋梗塞などを引き起こす可能性もあるため、温度差には十分に注意することが重要です。

一般社団法人 右京医師会  四方 典裕